生物系実習第3回【筋電図の測定】

生物系実習第3回【筋電図の測定】

筋肉の種類

筋肉は、明暗模様をもつ横紋筋と、明暗模様を持たない平滑筋に分けることができ、横紋筋はさらに骨格筋と心筋とに分けることができる。

筋肉は意思によってコントロールできる随意筋と、コントロールできない不随意筋に分けることができ、骨格筋は随意筋、心筋と平滑筋は不随意筋である。

 

活動電位と収縮

運動神経で生じた興奮が神経筋接合部を介して筋繊維に伝わると、筋繊維細胞膜で活動電位が発生する。

この活動電位は横行小管系を通って細胞内部に伝達され、筋小胞体からCa2+を遊離させる。

これにより細胞内のCa2+濃度が上昇すると、アクチンフィラメント上に付着しているトロポニンcとCa2+とが結合し、これがアクチンフィラメントの変性を引き起こす。

変性したアクチンフィラメントはミオシンフィラメントと結合し、ATPの化学結合エネルギーを消費してミオシンフィラメントがアクチンフィラメント内に滑り込む、すなわち筋収縮が起きる。

 

収縮様式

筋肉の収縮には等張力性収縮(isotonic contraction)と等尺性収縮(isometric contraction)の2種類がある。

等張力性収縮は、筋肉の一端のみが固定されている状況で、筋短縮が生じ、ほぼ一定の力を発揮する収縮である。例えば軽いダンベルを持ち上げる動作がこれに当たる。

一方、等尺性収縮は筋肉の両端が固定されている状態で、筋短縮が生じず、筋の長さによって異なる大きさの力を発揮する収縮である。例えば非常に重いダンベルを持ち上げようとするが一定の高さ以上に持ち上がらないときがこれに当たる。

 

電極と波形

収縮のうち、パルス波状の刺激を1回受け、収縮したのち速やかに弛緩するタイプのものを単収縮という。

一方、刺激の間隔が非常に狭く、筋弛緩が起こる前に次の刺激が到達するような場合、先行する短収縮の次に短収縮が加重されて(収縮加重という)、筋の収縮は増強し、より大きい収縮力を発揮する。これを強縮という。

 

ローマン反応(ATP分解-ADP再利用系)

筋細胞内では細胞質の解糖系およびミトコンドリアの細胞内呼吸により産出されたATPが存在し、これは筋収縮の際のエネルギー源となる。

ところが筋細胞内に存在するATPの総量はせいぜい約1秒間の筋収縮をまかなう程度であり、そのままでは激しい運動や持続運動には到底耐えられない。

そこでローマン反応が重要な役割を果たすことになる。

ローマン反応とは以下の式で表される反応であり、これにより一度消費されたATPの再利用が可能となっている。

 

   ATP+クレアチン ⇄ ADP+クレアチンリン酸

 

 

疲労

激しい運動が長時間持続すると、筋細胞内のATPが枯渇し収縮力が徐々に弱くなっていく。これが筋疲労である。

十分な酸素とグルコース存在下で数秒に1回程度の刺激による短収縮では筋疲労は起こらないが、刺激頻度をあげることにより疲労が生じる。

さらに、高頻度の刺激による強縮の場合には疲労はさらに早く起きる。

 

高強度の運動を長い時間続けると筋細胞内のATP濃度とクレアチンリン酸濃度は減少し、やむなく嫌気呼吸によりATPが供給される。

この反応は乳酸を生成する。

血液中の乳酸濃度の増加は、血液pHの低下をまねき、アシドーシスや筋肉痛の原因となる。